思いつくままに�W（６１〜８０）
魂の交流、できるかな

６１　おれは大丈夫だよ


６月５日
私はおっちゃんにさよならを言ったつもりだった
なのにおっちゃんは
私の中に居座っていた
私の身体感覚が、そういっていた

７月１日
夢のなかに現れたおっちゃんは
「おれは大丈夫だよ」とはっきり言った
「１週間に１回くらい、事務所に行こうかな」とも言った

翌日、事務所でその話をしたら
「もう机がないよ、どうしよう？」
「そんなこと言ってると、またひがむぞ」等々
みんなが盛り上がった
まるで、
おっちゃんが家か病院にいるみたいだった

なんか、とっても嬉しかったよ
おっちゃん、だいじょうぶなんだよね
しばらくは他の身体に生まれ変わらずに
私たちと一緒にいるんだね
そのつもりになるからね
（2003.7.20）






６２　どちらの私も


私の感情は、ときどき揺れ動く

病院の日々を思い出して
もう２度とおっちゃんに会えないと
つらい気持ちに落ち込む私

思い出の中の
さまざまな出来事を超えて
ただただ
おっちゃんと一緒のときの
嬉しさとワクワクした感覚を味わっている私
今この瞬間も、
おっちゃんがいっしょにいると
実感できる私

身体を持っていたおっちゃんとは、
もう２度と会えない
でも、
おっちゃんの生命の本質とは
いつでも会える

どちらの私もほんとうの私
そして、どちらのおっちゃんも
ほんとうのおっちゃん
（2003.7.20）






６３　テトリスくん


キーホルダーゲームの
テトリスくん
最近またスイッチの動きが悪いね
これまでにも、
何度も何度も動きが鈍くなって
もう君とは、さよならしようかと何度も思った
でも、別れられなかった

君の効果音を聞けば
病院にいるおっちゃんの、
ハイケアルームのベッドの脇にワープできた
君は
思い出の中のおっちゃんと出会う
「どこでもドア」だったんだ
だからいっぱい夜更かしをして
夜中までゲームをしてたっけ

でも、もう君とさよならしてもいいかな
私は思い出の中のおっちゃんではなく
今この瞬間、
私の中で息づいているおっちゃんと
つきあっていくから

テトリスくん
いままでほんとうにありがとう
（2003.7.20）






６４　ありがとう


おっちゃん
おっちゃんと出会わなかったら
私はこんなにも真剣に
生と死について考えなかったよ

生命が
身体から離れていくプロセスを
じっくりとみせてくれたおっちゃん
そして
肉体を失ってからさえも
私の人生に関わり
いっぱいのアドバイスをくれているおっちゃん
ほんとうにありがとうね
（2003.7.20）






６５　テトリスくん�U


君とさよならしようと思ったけど
やっぱり無理みたい
私やっぱり
病院にいるおっちゃんに会いたいよ
本質のおっちゃんも
もちろん大切だけど
身体を持っていたおっちゃんにも
会いに行きたいんだ
未練がましいよね
だから私って、悟れないんだよね

いいんだ、私は凡人だもの
もう少しの間、私の側にいて
「どこでもドア」でいてちょうだい
本当に動かなくなる、その日まで
（2003.7.21）






６６　誕生日


８月が来て
私はこの家に引っ越してきたときの
おっちゃんの年齢に追いついちゃったよ
この車いす住宅が当たったとき
本当に嬉しかったよね

もう、家に入るのに車いすを乗り換えなくていい
お風呂に入るのに、いちいち外に出なくていい
トイレに入るのに、車いすから床に降りなくていい
おっちゃん、すっごく自由な気分になったよね
前の家じゃあ、
おっちゃんのからだには、限界だったものね

おっちゃんが亡くなった年齢までは、まだ１１年もあるよ
がんばって生きなくちゃね
でも、私、本当はあと３０年生きる予定なんだ
３０年たっても、私のこと忘れないでね
（2003.8.26）






６７　不思議な融合


幼い頃
私の中には
私を見つめる
わくわくキラキラした存在があった
このからだで、この人生を楽しんでやるって
とってもわくわくしながら
私を見つめていた

最近、心の奥にいるおっちゃんと
幼い頃の私を見つめていた存在が
なんとなく似ているような気がする
わくわくキラキラ
わくわくキラキラ
そう、わくわくキラキラなんだよ

あなたはおっちゃんだったの？
おっちゃんがあなただったの？
それとも、最初から同じものだったの？
(2003.9.8)






６８　偶然の一致


あのとき私は
疲れた自分を癒すために
見舞いを休んで２日間の休みを取った
あのとき私は
見舞いの予定を１日ずらせて
仕事の会議に出席した
３日間会えないまま
寝たきりのおっちゃんをひとりぼっちにしたまま
私は私の都合を優先させた

そしてその翌朝、
おっちゃんの呼吸は止まった

ごめんね、ごめんね　ごめんね　ごめんね
寂しい思いをさせてごめんね
いくらあやまっても
いくら後悔しても
おっちゃんと話ができた日々は、もう戻ってこない

あれからずっと
ぜいたくに２連休を取った自分を
会議を優先してしまった自分を
責め続けてきたけれど

でも、ふと思ったよ

もしもあのとき疲れをとっていなかったら
その後の日々を耐えられただろうか
もしもあの日、予定通り見舞いに行って
遅くまで病院にいたら
翌朝５時に
病院に飛んでいけただろうか

挿管され
自分から話をすることもできないまま
意識はしっかりしていたおっちゃん

挿管前なら
ひとりぼっちで寂しければ
ナースコールを押すことができたんだよね
でも挿管されたあとは
誰もそばにいなければ
ベッドに縛り付けられているしかなかったんだよね

あのとき２連休をとったのは
あの日が会議になってしまったのは
そんな状態のときこそ
おっちゃんのそばにいられるようにと
神様が用意してくれた
「偶然の一致」という名の
プレゼントだったのかもしれないね
(2003.9.8)






６９　　もしかして


おっちゃん
おっちゃんはもしかして
すっごくしたたかだったのかもね

あの日、私は
「明日から３日間来られないけど、
そのあとはずっと誰かしら来るから、寂しくないからね」
そういって病院をあとにした

ひとりぼっちのとき
おっちゃんは
ナースコールを押しっぱなしだったってね
息が止まったその晩も
３０分おきくらいにナースコールを押してたってね

おっちゃんは
みんなが来る日と
ナースコールを押せなくなる日を
見事に一致させたんじゃん
あの日
元々来る予定だった義妹や姪や姪の娘といっしょに
義妹の夫も、いとこも甥も
みんなでおっちゃんを訪ねてきたっけね
おっちゃん
ナースコールを押せなくっても
さみしくなんてなかったよね

あれからほとんど毎日
私はおっちゃんのそばにいたよね
ふと目を覚ましたときには
私の姿が見えたでしょ

おっちゃんは意識してなかったかもしれないけれど
おっちゃんの潜在意識は
ちゃーんとおっちゃんが寂しすぎないように
したたかに手を打ってくれたんだよ
ね、おっちゃん
そうだったんだよね
見事だったよ、おっちゃん
(2003.9.8)






７０　あの日

またあの日が巡ってきたよ
おっちゃんが脳梗塞で倒れた！
おっちゃんを案じて心をふるわせ
ただ祈るしかなかったあの日

不安な心で
ふとつけたテレビ画面の向こうに
愛する人の悲劇に心を凍らせた
何千人、何万人の存在を知った
２００１年９月１１日の夜

そして、祈りは無力だった

あれから２年
もう２年？
いや、まだたったの２年だよ

あの日
愛する人の身を案じて心ふるわせた
世界中の仲間たち
いまはどうしている？
愛する人は
夢枕に会いに来てくれた？
悲しみ、怒り、憎しみ、嫉妬
さまざまな感情を
一瞬でも癒してくれた？

激しい感情の渦にもがきながらも、
少しずつ
穏やかな渦にしていきたいね
いつかそれが
愛のさざ波に変化するまで
(2003.9.14)






７１　　おっちゃんからの返事

ある人に、
ずっと悩んでいたことを
メールで質問した

２年前の今頃
毎日は病院に行けなくて、
それでも私は心の中で
ずっとおっちゃんのことを思い続けていた
一瞬たりともおっちゃんのことを忘れたことはなかったよ
でも、それって
ひとりぼっちで寝たきりで、
痛みと闘っていたおっちゃんにとっては
なんらかの力になれたのかなぁ？

その１時間後
突然おっちゃんの意識が
私の頭の中に流れ込んできた
こんなこと、初めての経験
ビックリした

＊　　　＊　　　＊

あんたがおれのことを一瞬たりとも忘れなかったように、
おれもいつもあんたのことを思い浮かべていたよ
あんたが病院に来てくれる日は、
もうすぐその時間だと思ってワクワクしたし、
来なければ来ないで、
元気に仕事をしている姿を思い浮かべていた
腰が痛いとか、喘息だとか言えば心配だったし、
車いすを飛ばして車にぶつからないか、いつも心配だったよ

おれが寝たきりになってからは、
遠いところを本当によく来てくれたね
あんたの元気いっぱいの姿は、おれの励みだったよ
透析でしんどいときには、あんたの姿を思い浮かべていた
人の夕食を食べちゃって、このやろーと思うこともあったけど、
そんなあんたを思い浮かべているのが楽しかった

あんたが、病院に来る日を調節して、
自分の体調をコントロールしているのは、ちゃんと知ってたよ
おれが寂しくないように、
いろんな人に声をかけてくれてたのも知ってたよ
あんたが体調をコントロールして、元気だったから、
おれは苦しいときはいつもあんたの名前を呼んでいた
いつも元気なあんたは、おれの心の支えだった
安心して頼ることができたよ

あんたがいてくれて、本当に嬉しかったよ
感謝している、ありがとう

＊　　　＊　　　＊

おっちゃん、
私のことをいつも思ってくれていたんだね
私、おっちゃんの力になれたんだね
なんだか久しぶりに泣けちゃったよ
悲しい涙じゃなくって
嬉しい涙だったよ

おっちゃん、返事をありがとう
（2003.10.13）






７２　　ふたりのとき

おっちゃん
おっちゃんが生きていたとき
私、とっても幸せだったよ

ふたりでいっしょに
本屋やファミレスに行ったよね
本と、ハンバーグと、アイスコーヒーがあれば、
私はすっごくワクワクできたよ
デザートにケーキなんか食べたら、もっともっと、ときめいたよ

この家で、いつもいっしょに食事をしたっけね
朝、目が覚めて、
ダイニングにおっちゃんの顔が見えれば嬉しかったよ

障害者の集会に参加するため、
車で福島まで行ったよね
フロントガラスから見えた福島の空は、
抜けるような青空だったね

このまちで、車のシートを倒して、
ふたりで桜の花ビラが散るのを眺めていたっけね
ほんとうに、きれいだったね

多摩川べりの道を車で行ったり来たりしながら、
雄大な花火を眺めたね
でも、おっちゃんは運転してたから、
ほとんど見られなかったね。

ふたりのでいるときにはいつも
あったかくて幸せな空気が流れていたよね
最近の私、
おっちゃんのことを思い浮かべるだけで
とってもあったかい気持ちになれるんだよ
とっても幸せな、いい気分だよ

(2003.10.15）






７３　　幸せの感覚

おっちゃんと過ごした日々の
幸せの感覚
あの感覚は
私ひとりのものじゃなくって、
ふたりのものだったんだね。

もうすぐおっちゃんに会えると、
わくわくしながら車いすで病院への道を走っていたとき、
おっちゃんも、わくわくしながら
私の到着を待っていてくれたんだね
おっちゃんが私を見つめるまなざしは、
いつも慈しみにあふれていた
おっちゃんは、私が身近にいることを、
本当に楽しんでくれていたんだね

いままでも、思い出せば十分、
幸せの感覚に浸ることができたけど
あの日、おっちゃんの意識が流れ込んでから
ふたりの間の心の境がはずれて、
幸せの感覚が思いっきりふくらんで、
溶け合って、
２倍にも３倍にもなっちゃったよ
これって、とっても不思議でステキな感覚だよ
(2003.10.15）






７４　　いつか

ふたりの間で溶け合った
ステキで不思議な幸せの感覚
今も私の中で
静かに広がっているよ

いつか
この幸せ感覚が曇る日があっても
この感覚を味わったという事実は
決して消えることはないよね
この感覚は
おっちゃんの魂が
私の魂に刻み込んでくれた
最高のプレゼントだよ
(2003.10.15）






７５　　夢の中で

今朝、夢の中におっちゃんが訪ねてきた
夢の中で、おっちゃんはさりげなく生きていて、
私が友達とわいわい騒いでいるところに、
いつもの優しい笑顔で私の隣にいた

おっちゃんは
よく夢の中に訪ねてくる

去年の夢の中では、
おっちゃんはいつもさりげなく生きていた
私は２０年くらい前の、
おっちゃんとうまく行かなかった頃の感情になっていて、
なぜかおっちゃんと別れることになって、
ひとりになれた解放感に浸っていた
何で、そんな夢ばかり見るんだろう？
それって、
「昔あんたが望んでいた『ひとりの生活』になれたんだから、
これからは自由に生きていきな」という、
おっちゃんからのメッセージのような気がした

最近、嬉しかったのは、
７月１日の夢
夢の中でおっちゃんは言った
「おれは元気だよ。１週間に１回くらい、あんたの所に行こうかな」
そうか、おっちゃん元気なんだねって、すごく安心した

その次に見たのは９月９日の夢
ベランダにおっちゃんの遺体があって、
ピンクの毛布までハッキリ見えた
なぜか、のぶちゃんもいたよ
おっちゃんが、もそもそ動くので
試しに「おはよ」って声をかけてみた
そしたらおっちゃん、パチッと目を開けた
「よかった〜、火葬にしなくて」って、
心の底からホッとした
でも、おっちゃんの顔をじっと見つめていたら、
急にその顔が膨らんで、
ぐにゃーっと崩れて、
そこで目が覚めた
「なんだ、やっぱり火葬にしちゃったんじゃん」って思った

あれって、おっちゃん、何を言いたかったんだろう？
もしかして「肉体は、もうないよ」という現実を、
私に伝えたかったのかな。

そして今朝の夢
目が覚めて、なんだか心が温かくなった
「僕は、いつもあんたのそばにいるよ」という、
おっちゃんからのメッセージのような気がした
(2003.10.21)






７６　　毎日会えなくても

私は両親が大好き
だけど、今はときどき泊まりに行ったり
電話で話したりするだけ
毎日会えなくても
ときどき声を聞いて、
元気なことを確認しあえれば、
それで安心
二人の愛情は十分に伝わっているよ

２０数年前に両親から離れたのは
私の意志
２年前におっちゃんが私から離れたのは
私の意志じゃない

でもさ
おっちゃんも、こんなふうに
ときどき夢で会いに来てくれれば、
それで十分なのかもしれないね
これからも
ときどき会いに来てね
(2003.10.21)






７７　　夢

夢は
おっちゃんと私をつなぐ
テレビ電話のようなもの
毎日会えなくても
ときどき無事を確認し合って
愛を確かめ合って
そして・・・

それぞれの道を歩んでいこうね
(2003.10.21)






７８　　本当は

腰痛で
私が初めて
車いすを使うようになった頃
やっぱりおっちゃんは入院していた
ときどき「イジワルな心」が出てくると
「私が車いすになったのは、看病疲れだよ。
だから、おっちゃんのせいだよ」
って、おっちゃんを責めたっけ
「そんなこと言われたって・・・」と、
おっちゃん、困ったような顔をしてたっけね
喘息になったときも
「おっちゃんの看病疲れだよ」って、
イジワルな私は
そういっておっちゃんを困らせたよね

でも、
おっちゃんがいなくなって
看病の必要がなくなってから
私ったら、どでかいケガをしちゃったよ
「おっちゃんのせい」じゃなくて
歩けなくなっちゃったよ
おっちゃんがよく言っていた
「エセ車いす」じゃあ、なくなっちゃったよ

本当は
腰痛になったことも、
喘息になったことも、
おっちゃんのせいじゃなくて
み〜んな、私の責任だったんだよね

本当は、
自分の責任だって、わかっていた
どんなにおっちゃんが病気をしようと
どんなに看病がしんどくても
自分の健康管理は自分の責任だって
わかっていたんだよ

私はただ
おっちゃんを困らせたかっただけ
おっちゃんにイジワルしたかっただけ
ごめんね、おっちゃん
(2004.3.28)

※２００３年１１月、私は自宅で転倒、
「左大腿骨骨折」となり、約３か月間入院していました。






７９　　おかえり

桜の花びらといっしょに
おっちゃんが戻ってきた

入院生活の途中から
私の皮膚感覚から離れて
どこかへ行ってしまったおっちゃん
病院の
優しい人たちに私を預けて
どこに行っていたの？

春の訪れと共に、
私の中に帰ってきた
おっちゃん

おかえり、待ってたよ
(2004.3.28)






８０　　最高の気分

車のシートを倒して
ふたりで
こぼれ落ちる桜の花びらに見とれていたっけね

青い空とピンクの花びら
とってもきれいだったね

ふたりで見た多摩川の花火

ふたりで仰いだ、福島の抜けるような青空

空には、きれいなものがいっぱいあったよね
そして、ふたりの間には
あったかい空気が流れていたよね

目を閉じて
あの瞬間にワープすれば
心があたたかくなる
心が満腹になる

おっちゃん
私はいつでも、おっちゃんに会えるよ
いつでも満ち足りた気持ちになることができるよ
これって、最高だよ♪
(2004.3.28)

※あれ、これって「72　ふたりのとき」と、ほとんど同じ内容ですね(^^;)
でも、今またあのときの感覚が戻ってきたことは、とても嬉しいです。

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